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第十一回(平成4年8月16日、12時・17時開演)

プログラム表紙

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「傾城重の井」


「傾城重の井」

 

「雁金」(かりがね) 清元連中

尾上菊之丞=振付

お照=尾上梅之助

 

「あやめ浴衣」 清元連中

藤間勘五郎=振付

梅乃=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、幸之介=松本幸右衛門、紫乃舞=中村紫若

 

河竹黙阿弥歿後百年記念上演
「染分千鳥江戸褄-傾城重の井」
(そめわけてちどりのえどづま-けいせいしげのい) 三幕五場

藤間勘十郎=振付
持田 諒=演出

序幕  重の井部屋の場
二幕目 重の井別座敷の場 清元連中
三幕目 田中慶政殺しの場
    重の井部屋の場 竹本連中
大詰  仲之町敵討ちの場

傾城重の井実は由留木の腰元重の井=加賀屋歌江(中村歌江)、伊達の與作・座頭慶政実は與作兄与八郎=片岡千次郎(上村吉弥)、鷲塚官太夫=松本幸右衛門、山形屋義兵衛=山崎権一、鷲塚八平治=澤村大蔵、花菱屋女房おつな実は八蔵妹小万=澤村藤車(澤村鐵之助)、井筒屋女房およし=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、花菱屋遣り手おなべ=中村紫若、花菱屋新造重芝=尾上梅之助、花菱屋新造重川=中村歌松、若い者喜助・地廻りの若い者=青池新吾(中村吉弥)、若い者伊助・地廻りの若い者=麻尾欣吾(中村梅二郎)、地廻りの若い者=宮倉昌也(坂東八一)、花菱屋新造重花=堀内紀宏(中村富紀)、花菱屋新造重野=野口晶(沢村由蔵)、花菱屋新造重春=豊田誠治(中村福弥)、花菱屋禿しげり=大久保忍、じねんじょのおさん=今泉愛

 

補足:第十一回公演をふりかえって

『染分千鳥江戸褄―傾城重の井』
この年が黙阿弥没後百年にあたったことから、「河竹黙阿弥没後百年記念上演」として『染分千鳥江戸褄』を取り上げました。河竹登志夫監修、藤間勘十郎振付。

この作品は『重の井子別れ』で有名な『恋女房染分手綱』の書替狂言。花菱屋の傾城重の井は、自分と恋に落ちたためにお家追放になった与作に、親の敵討ちを果たさせてやりたいと願っている。けれど、そのためには百両が必要。そこに付け入って身請け話を持ち込む鷲塚官太夫。さらに兄官太夫の邪魔だてをしようと横槍を入れる鷲塚八平次や、後に与作の実の兄だったと知れる座頭の慶政などが登場。重の井の生き別れの娘・禿のおさんは、母親とは知らず、重の井のためにに危険をおかして百両を拾ったことから生き別れた娘とわかる。八平次が慶政を殺す凄惨な場面があったり、ひとつの百両がさまざまな事件を引き起こしつつ人々の手を渡ったり、実は鷲塚兄弟が与作兄弟の敵であったりと、黙阿弥らしい世界が繰り広げられる。

【歌江】
「重の井物」の伝統を受け継ぎ、演じていてもとても気持ちのいい作品でした。
『どんどろ大師』から演技指導にあたってくださった梅花さんが関わった最後の作品になりました。(三代目中村梅花はこの年、平成4年(1992年)7月1日没)

【成島】
ちょうどこの頃「小芝居」の脚本を読む機会がありまして、全部で50本ほど読んだでしょうか。その中で知ったのがこの作品でした。とてもよくできた本なのですが、小芝居での上演が多く、しかも明治36年以来上演されていなかった。「葉月会」の参加者の中には幸右衛門さんや澤村鐵之助(当時は澤村藤車)さんなど、小芝居の経験がある俳優がたこともあって、この作品の上演が叶いました。
小芝居で頻繁に上演された作品は「葉月会」に似合うと感じました。大歌舞伎が取り上げないこともありますが、都市化・近代化の中で切り捨てられてきたもの――泥臭さと言えばいいでしょうか――がそのまま残っている。それを復活させておくことも研究会である「葉月会」に相応しいのでは、と思ったのです。このときは、たまたま小芝居で多く取り上げられた作品だったわけですが、これからは意識的に小芝居を取り上げていこうと、このとき考えました。今になって思えば「やっておいてよかった」。葉月会以後、このような実験的試みを実現することは難しくなりました。
この時も、松竹の永山会長が観にいらっしゃいました。それで与作・慶政兄弟を演じていた片岡千次郎を知り、上村吉弥襲名の話に繋がった。葉月会関係者としてとてもうれしい襲名でした。

 


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