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第十四回(平成7年8月16日、12時・17時開演)

プログラム表紙

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「櫓三番叟」


「団子売」


「花井お梅」

 

「櫓三番叟」 長唄囃子連中

藤間勘十郎=振付

太夫元=加賀屋歌江(中村歌江)、町娘=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、下足番=中村紫若

 

「団子売」 竹本連中

藤間勘五郎=振付

杵造=松本幸右衛門、お臼=中村京蔵

 

「月梅薫朧夜-花井お梅」(つきとうめかおるおぼろよ) 四幕六場

河竹黙阿弥=原作による葉月会台本
河竹登志夫=監修
持田 諒=演出

序幕  芝居茶屋座敷の場
二幕目 日吉町小澤内の場
三幕目 池上温泉縁切の場
四幕目 大川端箱屋殺の場、
    同 水月楼帳場の場 竹本連中
大詰  裁判所表門前の場

芸者久吉金井お粂・待合水月女将金井お粂=加賀屋歌江(中村歌江)、箱廻し巳之吉・金井傳之助=松本幸右衛門、深見丹次郎=中村勘之丞、高砂屋徳兵衛=中村又蔵、一中節師匠小澤たえ=市川左升、丹次郎女房その=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、金貸赤鬼九郎兵衛=中村吉次(中村吉五郎)、周旋人駒野勇助=澤村紀義、周旋人春山笑蔵=澤村光紀、箱廻し千八=松本錦一、箱廻し野太八=松本錦弥、芸者政吉=中村京紫、女中こま=中村歌松、朝日楼女中ふで=沢村由蔵、水月楼女中はま=尾上徳松、水月楼女中せん=中村小松、芝居茶屋若い者=中村東志二郎、大川端車屋=中村吉弥、大川端車屋=中村吉六、芝居茶屋女中=中村京巳、芝居茶屋女中=中村吉世(中村政之丞)、巡査=富田勲(尾上松五郎)、巡査=川﨑和治(中村橋弥)、傍聴人=川上健次(坂東好之助)、傍聴人=大内茂樹(市川茂之助)、傍聴人=田中努(澤村紀久弥)、傍聴人=伊東尚雄(坂東大和)、傍聴人=桒田信昭(中村扇之助)、傍聴人=遠藤学(尾上辰巳)、傍聴人=長靖之(中村仲之助)、朝日楼女中=黒川資一、朝日楼女中=小島清(坂東八大)

 

補足:第十四回公演をふりかえって

『花井お梅』
明治20年に実際に起きた事件(待合酔月の女将、花井梅が箱屋の八杉峰吉を刺し殺した)は、新内、俗曲、歌謡曲にもなり、芝居では大正期に真山青果が『仮名屋小梅』にしている。昭和に入ってからは川口松太郎が『明治一代女』に描いている。この作品は黙阿弥が72歳のときに書いた「散切物」で、事件の翌年、明治21年初演された。初演のお粂(お梅)は五代目菊五郎だった。のちに花柳章太郎らが新派で上演したが、歌舞伎の舞台に本作がかかるのは、この「葉月会」が初演106年ぶりだった。

久吉は新橋きっての人気芸者。その久吉と深い仲なのが深見丹次郎。金のことで久吉が窮地に陥ったときも、さっと現れて大枚百圓を差し出した。けれど二人の仲は周囲に歓迎されていない。元武士で今は車夫をしている実父傳之助は、娘が店を開いて女将に納まることを望んでいる。長いこと久吉に仕えてきた箱屋(芸者の荷物持ちなどをする男衆)の巳之吉も嫉妬でいっぱい。一中節の師匠たえにいたっては、丹次郎の妻お園に「このままでは丹次郎が仕事をしくじるのは目に見えている。二人に意見してくれ」と頼まれていた。それをたまたまお粂(待合水月を開いて女将になった久吉)が聞いてしまう。酔いつぶれたお粂は、丹次郎に偽りの愛想尽かしをする。打ちひしがれて数日行方をくらまし、店を放り出していたお粂は、実父傳之助のいる家に戻りにくい。そこで巳之吉を呼び出すが、ちょっとした行き違いから散々な悪態をつくこととなり、ついには自殺するつもりで隠し持っていた出刃包丁で巳之吉を刺してしまう。

【成島】
『花井のお梅』は「黙阿弥全集」を広げるたびに目が行き、上演候補に何度も上がった作品でした。が、やるとなれば歌舞伎では五代目菊五郎以来になりますから、勇気がいる。葉月会も14回を数えることとなり、やっとその勇気が出たという感じでしょうか。面白いのは「散切物」ですが義太夫がしっかり入るところ。お粂は巳之吉を殺した後に実父傳之助に会いに行きますが、そこも義太夫です。最後にラッパが入り、後ろに洋館が現れる。これは「葉月会」の工夫ではなく、黙阿弥の原作にそう書いてあるのです。ちなみに丹次郎のモデルは四代目源之助だったと伝えられます。黙阿弥は源之助に気を遣ってお梅をお粂に、丹次郎を役者ではなく勤め人として描いた。けれど副題には実説の『花井のお梅』を残したようです。

【持田】
もっとも印象的だったのは、歌江さんが演じたお粂の幕外の引っ込みです。囚人傘で顔を隠して七三に進むのですが、練兵場のラッパが聞こえたところで武家の血をふと思わせる思い入れを見せて花道を引っ込んでいく。歌江さんは、そこで三味線の音が入ると、海綿が水を吸い込むように歌舞伎の流れに戻して芝居をなさるんです。昔は座頭が芝居を作ったというのがよく分かるお粂でした。

【歌江】
花柳章太郎先生のお粂に、大矢市次郎先生の巳之吉など、『花井お梅』は新派の『明治一代女』の舞台で拝見しております。お梅(お粂)をなさった方々は、皆さん有名な先輩ばかり。その姿が目に焼きついて大きなプレッシャーでした。せめてと思い、痩せることから始めました。

 


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