「今様傾城道成寺」(いまようけいせいどうじょうじ) 長唄囃子連中
藤間勘十郎=振付
傾城葛城=加賀屋歌江(中村歌江)、新造九重=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、安珍=中村紫若、新造=中村梅蔵、新造=中村歌松
「御伽草紙百物語-妲妃のお百」(おとぎぞうしひゃくものがたり-だっきのおひゃく) 四幕六場
河竹黙阿弥=原作による葉月会台本
河竹登志夫=監修
持田 諒=演出
序幕 高輪大木戸の場
二幕目 武蔵屋角口の場、
同 座敷の場
三幕目 砂村横堀殺の場
四幕目 総禅寺書院の場 竹本連中
大詰 同 庭内の場
妲妃のお百・お秀の方実は妲妃のお百=加賀屋歌江(中村歌江)、桑名屋徳兵衛=山崎権一、美濃屋重兵衛=中村又蔵、中川右膳=松本幸右衛門、魚屋新助=澤村大蔵、住職玄海=中村駒助、操御前=澤村藤車(澤村鐵之助)、雇い婆お熊=中村紫若、堅田金五郎=中村梅蔵、箱屋小助・葛飾次郎三郎=中村吉次(中村吉五郎)、諸士林蔵=澤村光紀、諸士郷蔵=中村吉弥、腰元=中村歌松、腰元=中村梅二郎、腰元=中村小松、若党・諸士=二村幸雅(市川段翔)、若党・諸士=土肥洋史(中村鴈洋)、中間・所化=田島春男(市川竜之助)、中間・所化=松榮忠志(中村吉六)、仲居・腰元=大西忍(坂東玉望)、仲居・腰元=谷亮一郎(中村京巳)、一子三之助=白岩亮(市川亮太郎)
補足:第十三回公演をふりかえって
『御伽草子百物語 妲妃のお百』は河竹黙阿弥作、河竹登志夫監修。これも珍しい復活上演で、成島が脚本を担当し、持田が演出。
「妲妃(だっき)」は世界人類を滅亡させようとした金毛九尾の狐が中国の宮廷で化けて名乗った名。(天竺では「華陽夫人」、日本では「玉藻の前」と名のった)。この作品は、その〈妲妃〉のような悪女の物語。
大坂随一の廻船問屋桑名屋に下働き入ったお百は、主人徳兵衛をたらしこみ、正妻お高に不義密通の濡衣を着せ、お高が妊娠中にも関わらず無残に折檻したあげく、身一つで追い出してしまう。が、内儀に納まったのもつかの間、桑名屋の土蔵から不審火が出てすべては灰に。やり直すべく二人は江戸に下るが、落ちぶれた徳兵衛に興味のないお百は、道中、危ないところを助けてもらった美濃屋重兵衛に乗り換える。次は芸者小三となり、千葉家の家老中川右膳と組んで殿の愛妾となり、右膳に実権を握らせようとお家乗っ取りを企てる。邪魔なのはいつまでも付きまとう徳兵衛。砂村の土手で「草葉の影から私の出世を見物おしな」と殺してしまう。側室にまで出世したお百だが、そこにお高がいまわの際に生んだ徳兵衛の一粒種、三之助が現れる。右膳と企んだお家乗っ取りが露見し、追い詰められたお百は三之助に討たれて息絶える。
【歌江】
『今様傾城道成寺』は以前、「木の芽会」でも踊らせていただいています。それを「葉月会」用にご宗家が振付し直してくださいました。
お百は「妲妃」とあだ名されるほどの悪婆。お腹に子を宿しているお高を残虐に折檻するところと、徳兵衛を惨殺するところがひとつの見せ場でしょうか。いじめる役はもちろん面白いですけれど、派手に殺される役もいいですね。
【成島】
『妲妃のお百』の台本を再構成するにあたっては、歌江さんからたくさんのアイデアをいただきました。最後に、側室になったお百が、お高と徳兵衛の遺児三之助に会いますが、そこでお百の手首にある傷を見つけた三之助が「母の仇にも手首に傷があると聞かされた」と言い出します。それはお百が折檻したときに、お高が噛み付いて出来た傷だったのですが、いつまでも消えないのでお百も気味悪がっていた。そのことを知っているのは実は兄だけ。「それをこの子が知っているということは…」というように、お百の心がここで大きく変わるわけです。それを「慌てて手首を隠す」という短い芝居に凝縮し、次の自害に近い敵討ちにつなげる――。それも歌江さんのアイデアでした。
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