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第十回(平成3年8月15日、12時・17時開演)

プログラム表紙

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「英執着獅子」


「白浪五人女」


「釣女」

 

「英執着獅子」 長唄囃子連中

尾上菊之丞=振付

菊姫後に獅子の精=尾上梅之助、力者=中村福次(中村梅蔵)、力者=中村芳彦(中村亀鶴)、力者=市川新七、力者=澤村紀義

 

「處女評判善悪鏡−白浪五人女」(むすめひょうばんぜんあくかがみ−しらなみごにんおんな) 四幕

河竹黙阿弥=作
河竹登志夫=監修
持田 諒=舞台演出

序幕  鎌倉花水橋の場
二幕目 同 染川二階の場 清元連中
三幕目 真野屋店先の場
大詰  行合川勢揃の場

素ばしりお熊・奥女中竹川実は素ばしりお熊=加賀屋歌江(中村歌江)、真野屋徳兵衛・真野屋徳兵衛実は神道徳次=松本幸右衛門、徳兵衛女房お時実は雲霧お六・雲霧お六=澤村藤車(澤村鐵之助)、山猫おさん=澤村大蔵、木ねずみお吉=中村京妙、おさらばお傳=尾上梅之助、みずてんおわか=尾上梅之丞(大谷ちぐさ)、堅田保之助=中村京蔵、奴佐五平・捕手=中村芳彦(中村亀鶴)、幇間花山=尾上辰緑、船頭清七・道具屋銀八・捕手=中村又之助、真野屋手代宗助=尾上辰夫(吉川明良)、真野屋手代与八=片岡孝蔵、料理茶屋染川娘お柳=中村京紫、奥仕えお勝=中村歌松、浪人侍・捕手=澤村光紀、浪人侍・捕手=澤村紀義、捕手=中村福次(中村梅蔵)、捕手=市川新七、浪人侍・真野屋手代新七・捕手=青池新吾(中村吉弥)、参詣町人・捕手=宮倉昌也(坂東八一)、参詣町人・捕手=麻尾欣吾(中村梅二郎)、女中たい=野口晶(沢村由蔵)、参詣町人女・女中お蔦=豊田誠治(中村福弥)、茶屋女・捕手=堀内紀宏(中村富紀)

 

「釣女」 常磐津連中

藤間勘十郎=振付

太郎冠者=尾上辰夫(吉川明良)、大名=松本幸右衛門、上臈=中村京蔵、醜女=加賀屋歌江(中村歌江

 

補足:第十回公演をふりかえって

『處女評判善悪鏡』(白浪五人女)
『敷島物語』で評判をとったこともあり、しばらく黙阿弥作品を取り上げることになる。『處女評判善悪鏡』は『白浪五人男』の書替狂言で、70年近く上演されていなかった。前回と同じく、河竹登志夫監修、葉月会文芸台本、持田諒演出。

春の鎌倉花水橋。真野屋徳兵衛は、絡んでくる酔客を見事な手並みであしらった若侍に感心する。名を聞くと近江六角家家臣、堅田保右衛門の倅(せがれ)保之助と答えた。主家の宝刀琵琶丸を鶴岡八幡宮に奉納に上がる途中に略奪されてしまい、重役の真野浦之進は自害切腹、父の保右衛門も閉門蟄居の身。ゆえに一人で宝刀琵琶丸を探す旅を続けているのだという。その話を聞いてびっくりしたのが徳兵衛。浦之進とはわが父なり。徳兵衛もまた父の恨みを晴らそうと琵琶丸を探していたのだ。が、保之助に詳細は知らさぬまま、再会を誓って別れる。

秋。暑気払いに料理屋で遊ぶ徳兵衛の隣座敷に、美しい奥女中竹川がいた。折りよく雷が鳴り出したので、徳兵衛は「こちらには男が大勢いますから、いらっしゃいませんか」と誘い、そしていつしか……。ところが数日後、その奥女中が伝法な「素ばしりお熊」に変わって真野屋に押しかけてきた。「奥女中の姿でいたのは、仲間とのほんのお遊び」と言い、一夜の出来事をネタに徳兵衛を強請ろうと仲間のおさんを伴ってやってきたというわけである。しかし、そこに現れた徳兵衛の女房お時を見て、お熊が「お前はお頭!」と驚き、おののく。お時は亭主の徳兵衛にも明かしていなかったが、実は「雲切りお六」と呼ばれる盗賊の頭。白浪五人女として、お熊やおさんを率いているのであった。正体が分かっては真野屋に迷惑がかかるかもしれないと、お六は離縁を望む。が、今度は徳兵衛が「実は俺も盗賊」と大びっくりの話を始めた。徳兵衛は父・浦之進の仇を見つけるため近江を出たものの、食いつめて悪の道に入り、今では神道徳次として恐れられているという。それを聞いてお六は震え出す。「じゃあ、自分が襲ったあの近江の武士は……」。浦之進を襲い、琵琶丸を盗んだのは誰を隠そう、お六だったのである。因果は巡り巡って二人には捕が迫っていた。

秋。鎌倉七里ガ浜に白浪五人女が揃った。多勢の捕手を迎え討ちながら、堂々ツラネを述べるのであった。

【成島】
17回の「葉月会」公演の中で、切符がいちばん売れたのがこの回でした。今でもはっきり覚えていますが、残ったのは直前にキャンセルされた7枚のみ。プロデューサーとして、こんなにうれしいことはない。そういう意味で、もっとも印象に残る回です。
『敷島物語』の後、黙阿弥作品を片っ端から読みまして、これなら女形が活躍できるし、脚本もとても面白い。それでこの作品を取り上げることにいたしました。正直言いますと、新聞に劇評が載るほど評判をいただいた『敷島物語』の後では、何をやっても霞むのではないか、という妙な諦め心もありました。「肩の力を抜いて、講談をもとにした作品でもやろうか」と話し合ったくらいでした。でも「せっかく黙阿弥作品の復活で評判を取ったのだから、もうひとつ黙阿弥をやろう」ということになったわけです。元が誰もがご存知の『白浪五人男』で、以前は頻繁に上演されていたようですので、その存在を知る人は多い。けれど70年間上演されていなかったので、誰も見たことがない。多くのお客様が詰め掛けてくださったのも「話には聞いたことがあるけれど、見たことがないのでぜひ」ということが大きかったようです。新聞記者の人たちにもこぞって「切符が売り切れていて買えない。どこでもいいから見せてくれ」と頼まれ、うれしい悲鳴を上げた記憶があります。作劇でもっとも苦労したのは「勢揃い」の場面でしょうか。黙阿弥の原作にない部分でしたので、四代目源之助が新富座で上演した時の記録を参考にさせてもらいました。

【持田】
この『白浪五人女』も、私が演出を担当しました。『白浪五人男』の書替狂言ですから、似た場面が多々出てきます。〈勢揃い〉もありまして、『五人男』では花道に一人ずつ登場するか、土手を歩いて登場するという場面です。花道の出は華やかでいいのですが、歌江さん、成島さんと話し合い、「葉月会はあくまで研修会。本公演とは違うし、五人女が花道から登場しては天地会のようになってしまうのでやめよう」ということになりました。土手を歩いてくるのは「女がやると無様だろう」ということで却下。思案した結果、五人をセリ上げることにしました。が、これは評判がよくなかった。セリの両側に立木を置いたこともあって、渡辺保氏に「これではレビューだ」と劇評に書かれてしまいました。『敷島物語』は知られていない芝居だったけれど、『五人女』は書替狂言ですから誰でも元をよくご存知。そういう作品を再構成する難しさを痛感しました。

 

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